ダイエットは、色々な人が様々な持論を展開するので、真偽がとても分かりづらくなっています。たとえば、「お菓子を食べると太る」という主張を聞いたことがあると思います。でも本当でしょうか?たしかに、お菓子を食べたから太ったという経験を持っている方は多いだろうし、感覚としては正しいように思います。しかし、これまでに様々な研究が行われてきましたが、お菓子を食べると太るかどうかは、実はよく分かっていないのです。
■今の科学で分かっていること、いないこと
私たち人間は、自分が直観として感じたことを真実と思いやすい、というバイアスがあります。その直観を覆し、客観的な事実を見つけ出す手法として、まさに科学が発展してきました。
たとえば、19世紀まで「タバコは体によい」と信じられていましたが、20世紀に行われた様々な研究の結果、その常識は覆されることになりました。ダイエットについても同様に、様々な「論」がある中、本当に有効な手法は何なのか、科学は「証拠」を提示してくれるのです。
ダイエットの科学については、2013年、ニューイングランド医学雑誌という権威ある科学雑誌に、「ダイエットのウソ・ホント・不明」という研究が掲載されました。過去に行われたありとあらゆるダイエットに関する研究を調べた結果、次の表のようなことが分かったのです。
事例 | |
ウソ |
1) 急にやせると、ゆっくりやせるよりリバウンドしやすい 2) 現実的なダイエット目標を立てた方がリバウンドしにくい |
不明 |
1) 朝食を抜くと太る 2) 野菜や果物を食べるとやせる 3) お菓子を食べると太る 4) 夜遅く食べると太る |
ホント |
1) 食事制限はやせるのには有効だが、長い目で見ると続かない 2) 身体活動や運動の増加は体重キープに有効 |
出典: Casazza et al.(2013) NEJM. 368:5;446-445.
私自身、この研究結果を知ってたいへん驚きました。たとえば、一般的に「急に痩せると、ゆっくり痩せるより、リバウンドしやすい」と信じられていますが、それはウソであると研究を行ったCasazza氏らは報告しています。直観的には信じられないような気もしますが、確かに過去の研究をきちんと見ていくと、急に痩せようが、ゆっくり痩せようが、減量効果に差はないという事実があります。
また、「食事制限は痩せるのには有効だが、長い目で見ると続かない」ということが、確実な「証拠」としてあがっています。つまり、食事制限だけで体重を減らしてキープすることは難しいということです。
それでは、体重を落とし、かつ落とした体重をキープするためには何が重要なのでしょうか?Casazza氏らによれば、「体を動かすこと」がダイエット成功の鍵だといいます。必ずしもジョギングやジムに通う必要はありませんが、散歩や家事などの活動を続けられる人だけが、落とした体重をキープできるということです。
つまり、体重を落とすには「食事制限」、キープするには「日常の中で体を動かすこと」というのが、ダイエットの真実のようです。